リアライン ・・・ からだのゆがみを科学する
 

筋、軟部組織、そして関節包を指先で見る

  今回はISR®の中でも上級編といえる深層のリリースについてご紹介させていただきます。
 
 ISRの技術は、治療だけでなく、滑走性の評価にも重要な役割を果たします。さらには、それを続けることで、臨床で何よりも大切なスキルである「触診」の技術を格段に進歩させることができます。総腓骨神経のような直径1-2㎜の神経、血管、膝内側側副靱帯(MCL)と内側半月板との間の滑走不全、大殿筋の深層における梨状筋と股関節関節包との間の癒着などを、鮮明に触知し、その状態を判断できるようになります。 
 
ISRの技術のもう一つの特徴は、触れることで圧痛のレベルを知ることができます。滑走不全が作り出す痛みは、それをリリースしようとしたときに触知され、その癒着の程度から痛みの程度を推測できるようになります。それにより、患者様とより信頼関係をもって治療を進めることが可能になります。
 
過去2回において浅層のリリース、筋間のリリースと紹介させていただきました。今回は、筋と関節包との間のISR®を紹介します。関節周囲の筋は緩んできたのに、可動域は改善しない、といった経験したことがあるでしょう。そのようなとき、可動域の制限因子として、関節を覆う関節包と筋や腱との滑走不全を疑います。関節包が周囲の筋・腱と癒着すると、関節運動に伴う正常な関節包のゆとりが失われ、関節運動の重大な制限因子となるためです。ISR®セミナーやCSPTにおいて、このような関節包に対する組織間リリースの実技を行っています。
 


 

症例紹介

 

最終屈曲・内外旋の制限を有する投球肩障害
 
◆評価・問題点
 
 可動域は屈曲制限(150°)、外転90度における内・外旋制限、屈曲90度における内・外旋制限が認められた。最終屈曲時のエンドフィールは軟部組織性(硬め)であった。触診すると、上腕三頭筋、肩甲下筋腱と関節包との間の滑走不全があり、これらが屈曲最終域において緊張した。他動運動時に骨頭の前上方偏位を認めた。肩甲胸郭関節のアライメントは比較的良好であった。以上より、関節包と周囲の筋・腱の癒着を可動域制限の原因と推測した。

 

目標・治療プログラム

 
◆目的
関節包―筋間の滑走性改善
 
◆可動域治療
・上腕三頭筋近位と関節包間のリリース
・肩甲下筋腱と関節包間のリリース(図)
 


 

経過・考察

 
◆経過
 治療により可動域制限は解消された。他動運動時の異常運動が消失し、コッキング相、フォロースルーでの痛み消失に至った。今後は腱板機能向上も加えて再発防止に向ける。
 
◆考察
 肩関節の可動域制限が完全に解消されないとき、このように関節包と周囲の筋・腱との滑走不全が制限因子となっている可能性があります。これを放置すると、投球動作中に肩甲上腕関節の異常運動が繰り返されることになり、再発のリスクが高いままの状態は変わりません。特に高いパフォーマンスを追求するアスリートでは、これを確実に解決することは必須であると考えるべきでしょう。

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